良く言われるように、放射線対策において最も重視すべきは、放射能に汚染された環境へ立ち入ることによって被曝する「外部被曝」よりも、放射性物質を含む食物や水などを摂取することによる「内部被曝」である。従って、居住する家屋やその地域での放射線量当量(単位シーベルト)の値が低いからと言って、日々の食事や飲料水が汚染されていることも考えられるので、それだけでは安心できない。風評被害が深刻化しているのが気になるが、国民の健康のためを考えると頭の痛い問題である。
つまり、放射線対策には被災地だけでなく、グローバルな問題である。また、年間許容放射線量当量は成人の場合で200ミリシーベルトであるそうだが、これも法的な裏付けのない暫定基準値に過ぎず、ましてや科学的根拠の乏しい数値である。これが、日々細胞分裂を激しく繰り返している子供の場合、もっと低くなるのは当然であるが、その数値を巡って研究者の間でも見解は大きく異なっている。結局、いくらまでが安全であるかについて我々一般人には知る術がないと言うべきだろう。
ここまで見れば、放射線対策において重要である放射線量当量の「しきい値」を定めることは不可能に近いことであることが了解できるだろう。一体に放射線の人体に及ぼす悪影響には個人差があり、それを調べようにも、再現性のある測定を行うことが極めて困難であろうし、そもそも人体を放射線に被曝させること自体が危険な行為である。だから、その研究成果が明らかになる見通しはない。以上のことから、放射線対策に線量当量のしきい値を設けるのは適当ではなく、食品や水の管理を徹底的に行うことが現実的な対処法であると結論づけられる。